第16回 Vol.2 医師を目指す高校生へ 後編
自治医科大学に進み、青森県の医師になろう!

自治医科大学出身の医師たちが語る、青森県の地域医療の魅力

医師を目指している青森県の高校生必見!
本州最北端の地域医療を支える「大間病院」の医師たちによる座談会を開催。自治医科大学に進学して青森県の医師になること、そして青森県の地域医療を支える魅力について語り合ってもらいました。

【この5人の先生に話を聞きました!】
安齋 遥 先生(あんざい・はるか)
大間病院 院長
安齋 遥 先生(あんざい・はるか)
出身高校:青森県立八戸高校
自治医科大学卒業年:2014年
木村 凌矢 先生(きむら・りょうや)
大間病院 副院長
木村 凌矢 先生(きむら・りょうや)
出身高校:青森県立青森高校
自治医科大学卒業年:2017年
落合 秀也 先生(おちあい・しゅうや)
大間病院 内科医長
落合 秀也 先生(おちあい・しゅうや)
出身高校:青森県立三本木高校
自治医科大学卒業年:2019年
小成田 衆 先生(こなりた・しゅう)
大間病院 内科医長
小成田 衆 先生(こなりた・しゅう)
出身高校:青森県立青森高校
自治医科大学卒業年:2020年
角田 健悟 先生(つのだ・けんご)
大間病院 内科医長
角田 健悟 先生(つのだ・けんご)
出身高校:青森県立弘前高校
自治医科大学卒業年:2021年

今回は、Vol.1・Vol.2に分けて、公開いたします。
Vol.1の記事はこちら

Q みなさん「大間病院」で働かれていますが、地域医療というフィールドで働く苦労、やりがい、面白さは何でしょう?

【「大間病院」について】

大間病院は本州最北端に位置し、下北半島北部の大間町、風間浦村、佐井村の地域包括医療を担う中核病院である。
  • 入院医療と初期医療を担っている。
  • 予防医学に力を入れると同時に、地域の拠点病院として機能し、内科のほか、外科、整形外科などの専門医療を提供している。また、在宅看取りや緩和ケアにも力を入れている。
  • 総合診療においては、幅広い疾患に対する診療、むつ総合病院等と連携した初期・二次救急診療などを提供している。
詳しくはコチラ(医ノ森 国民健康保険大間病院)
国民健康保険大間病院 | 医ノ森 aomori (inomori-aomori.info)

小成田先生

都市部には医師がたくさんいますが、地域には少なく、特定領域において高度な治療を提供できる専門医も多いとはいえません。また、近隣に医療機関がないことから地域の病院には小児から高齢者の方まで幅広い方が受診します。そのため、地域医療に従事する医師は内科外科に関係なく、あらゆる疾患に対応する必要があります。

木村先生

それが地域医療に携わる医師の大きな特色ですね。

小成田先生

幅広い領域、幅広い年齢層の患者さんに対峙するため大変なこともありますが、それだけ医師としての面白さや醍醐味も感じることができます。

角田先生

地域という狭いエリアでは患者さんとの距離感も近く、“医師と患者”としてだけではなく“人と人”の関係を構築できるところも大きな特徴だと思います。

小成田先生

やっぱり地域医療の現場は“人と人”との関わりが濃いですよね。医療を通して患者さんの人間関係や住民同士のつながり、家族関係など“顔が見える”ことが特徴です。

角田先生

病院のなかでは僕が医師で、患者さんを診る立場ですが、院外へ出るとその関係性は患者さんが「寿司屋の大将」で僕が「客」になったりします。地域には日々の生活の中で、住民同士が相互に支え合うといった現代では薄れつつある互助の精神が生きていると感じています。

落合先生

逆に“人と人”の関係が濃いからこそ、診療に苦労したり悩むこともあります。

角田先生

そうですね。“人と人”の関係だからこそ対応に苦慮する場面もあります。疾患だけみたら明らかな正解があるのに、患者さんのキャラクターや人生観、生活背景まで視野を広げると、何がベストな治療方法なのか悩ましくなることも多いですね。

小成田先生

ときに何をどこまでやれば良いか迷うことも多々ありますし、習った通りにはいかないこと、また教科書には書いていなことにも対応しないといけない場面もあります。

角田先生

それでも、目の前の患者さんのために悩み抜いて出した治療提案によって、医師として患者さんと同じ方向を向いて走っていけるようになる瞬間は、何にも代え難い大きなやりがいです。

落合先生

地域では医師数も医療機関も少ないため医師が派遣されており、一人ひとりの医師が住民からとても頼りにされていますし、それを実感することもできます。常に目の前の命に真剣に向かい合うことができる環境ですし、その分、大きな責任も感じますが、それだけに患者さんが元気になったり、元の生活ができるようになると喜びもひと際大きいです。

木村先生

それと、地域の医療スタッフや介護従事者との多職種連携による“チーム医療”も地域医療の特色ですよね。治療が終わり、医学的には退院可能であるものの、入院によって筋力が落ちているため直ぐに家に帰っても生活は難しいケースがあります。そのため、一旦、リハビリ施設やショートステイにつなげたりする際、看護師や地域のケアマネジャー(介護支援専門員)と相談しながら退院調整するなどチーム医療の大切さも日々感じています。

【チーム医療とは?】

一人の患者さんに複数の医療専門職が連携して、治療やケアに当たること。
医療・介護の現場には、医師、看護師、薬剤師、検査技師、リハビリスタッフなどの医療従事者や、ケアマネジャー、介護士といった介護従事者など、多彩な専門職が働いています。こうした多職種が連携・協働・補完しあい、それぞれの専門スキルを発揮することで、一人ひとりの患者に最適な医療・介護を提供することができます。多職種連携によるチーム医療は地域における限られた医療資源(人材や設備)を有効、かつ効率的に活用するためにも非常に重要です。

落合先生

地域医療において、院内の多職種はもちろん、地域の訪問看護師やケアマネジャー等の施設スタッフといった多職種連携による“チーム医療”は必須ですね。

安齋院長

それと、地域には都市部と違って専門性の高い大きな病院がない分、住民の健康を守ったり、病気の重症化を防ぐことも重要です。そのため、健診の必要性の周知や健康教室の開催など病院に受診・相談するまでのきっかけ作りも大切な仕事となります。さらに症状によっては適切な専門病院へつないだり、また、家庭の事情などで遠方にある専門病院に入院できない患者さんもいるため、そうした生活背景も踏まえながら患者さんが納得できる医療を提供することも私たちの重要な役割なんです。苦労するところですが、逆にそれがやりがいや面白さでもあり、地域医療に携わる大きな魅力だと思います。

Q 専門医資格の取得など、地域医療における医師の専門性についてはどう考えていますか?

【専門医資格とは?】

それぞれの診療領域における適切な教育を受けて、十分な知識・経験を持ち患者から信頼される標準的な医療を提供できるとともに先端的な医療を理解し情報を提供できる医師。
診療に従事しようとする医師は2年以上の臨床研修(病気の初期診療における基本的な診療能力を修得する研修)を修了する必要があります。その後、多くの医師が高度な資格である専門医資格の取得を目指しています。自分が目指す診療科(内科や外科といった19の基本領域)にて、3~5年間の決められた年限(診療科により異なる)の専門研修を行い、専門分野の高度なスキルを修得していきます。専門研修を修了することで専門医試験の受験資格を得ることができます。

小成田先生

大学病院や中核の市中病院など患者数の多い大規模病院においては、特定の病気や臓器に関する高い専門性をもった医師のニーズがあります。ただし、先ほども話したように地域の診療所や病院では近隣に大きな病院がないことから、小児から高齢者まで多彩な症状の方々が訪れます。そのため自治医科大学出身の医師が働くような地域の医療機関では、専門性の高さよりも幅広く対応できる力が求められます。

安齋院長

もちろん高い専門性をもった医師の存在は非常に重要ですが、地域医療の現場で働く私たちの大きな役割は専門医による高度な医療につなぐまでの診断や多様な症例に対する初期対応です。

落合先生

自治医科大学出身の医師は、少なくとも9年間、地域医療での勤務義務を負っています。そのため特定の病気や臓器別における専門性の高いスキルの習得や臨床経験を積み重ねることは難しく、他大学出身の医師に比べて専門医資格の取得はどうしても遅れてしまいます。

安齋院長

現代社会の高度化、細分化された先端医療を安全で確実に実践できるようになるには専門知識と高度な手術手技の経験をたくさん積まなければ不可能ですからね。

木村先生

自治医科大学出身の医師にとって、9年間で取得できる専門医資格は限られると思います。

安齋院長

今後、専門医に関連した自治医科大学卒の医師のキャリアパスがどうなるのかにもよりますが、今現在は青森県において義務年限中に取得できる専門医資格は「総合診療専門医」と「内科専門医」くらいだと思います。ただし、医師の専門性をもつことは必ずしも早ければ良いというものではなく、専門医資格の取得が遅くなることは全くデメリットだと思いません。

【総合診療専門医とは?】

患者さんの年齢に関係なく、急性期から終末期、内臓疾患や軽度の外傷まで多岐にわたる疾患や健康問題の解決に当たる専門医。

角田先生

特定領域の技術を磨き上げるのはとてもかっこいいですが、手に職をつけることだけが専門性ではないと思っています。僕もどちらかというと患者さんや地域全体を俯瞰することに長け、人や地域全体を診ることのできるジェネラリストに憧れます。

落合先生

僕は将来、脳神経内科の専門医資格を取得したいと思っています。地域の医療を担うことができる力というベースをもち、その上で高い専門性も有した医師を目指すことができます。将来はどんなカタチであれ、自分の持てる力をすべて活かして、病院、地域、患者さんのニーズに合った医療を提供できる医師になりたいです。

木村先生

地域の医療を担うことができる力をもち、かつ高い専門性も有した医師になれるのは、自治医科大学出身の医師ならではの大きな魅力でしょう。

小成田先生

「大間病院」に赴任して1年半が経つのですが、地域医療の現場ではあらゆる病気に対応できる地域の医療を担うことができる力が必要なんだなと改めて実感しています。地域には子どもからお年寄りまで、さらに病気だけではなく介護や福祉、そして生活まで視野を向けられる医師が必要なんですよね。地域のさまざまなニーズに対応できる幅広い力をもった医師、また後輩にもしっかり指導できる医師が僕の理想像です。

角田先生

僕は両親が医師であり、物心ついた頃から将来の夢は医師になることでしたが、中学に進学した頃から、病気を治すだけではなく医療を通して地元をもっと誇れる素敵なまちにしたいと思うようになりました。高校生になってからは、地方創生やまちづくりにおいて経済・教育・医療に対する包括的なアプローチができる人材になりたいと考え、現在も人と地域を診ることのできるジェネラリストを目指して頑張っています。

木村先生

病院を訪れる患者さんだけではなく、地域住民すべての方々を対象に、治療はもちろん、病気予防や健康増進活動など、いわゆる“地域を診る”ことも私たちの重要な役割です。そして医療を通して地域創生やまちづくりに貢献できることも大きな魅力ですね。

角田先生

地域の問題を抽出し、医療を通してさまざまな側面から地域づくりにアプローチできる医師になりたいと思っています。

安齋院長

それと、近年はAIの技術発展が目覚ましく医療現場での活用も増えていますし、さらに突然のコロナ禍など医療を取り巻く環境はものすごいスピードで変化しています。そうした状況にあるなか、医師として何も変わらずに停滞していては時代の流れに取り残されてしまいます。何があっても驚かず、動揺せず、BestまでいかずともBetterな選択ができるよう、医師は常に勉強をし続け、知識と経験値をどんどん増やしていくことが重要です。どんな場所で働こうが、どんな専門性をもっていようが、このことは共通して非常に大事なことだと思います。

Q 地域医療に従事する医師は忙しいイメージがありますが、実際はどうなんでしょうか。医師としてどのような一日、生活、オフを過ごされていますか?

小成田先生

「大間病院」における1日の仕事の流れとしては、午前中が外来診療や超音波検査、内視鏡検査といった検査業務、午後はその日によってスケジュールが異なるのですが、訪問診療や施設回診、ワクチン接種業務、さらに大間町に隣接する佐井村の診療所で外来を行うなど、これらを医師6人で分担しながら業務を行っています。また、平日は週1回、土日は月2回ほどの当直勤務をしています。

木村先生

金・土・日の当直は医師2人で行うため、週末は残りの医師4人が緊急呼び出しのない完全フリーで休むことができます。オンとオフのメリハリがしっかりしているため、休みの日は思いきりリフレッシュすることができますよね。

小成田先生

毎月1週間、研修週が設けられており、自分が希望する病院へ研修に行き、スキルアップのための勉強ができることも魅力だと感じています。

安齋院長

スキルアップのための研修会や学会への参加希望などにも応えていますし、それによって、どうしても医師が足らなくて困るというときは青森県立中央病院に応援を依頼して医師に来ていただいています。休み希望もほぼ確実に通る環境です。

小成田先生

有給休暇や夏季休暇の取得についても比較的融通が利きやすいのが嬉しいですね。

安齋院長

少なくても大間病院はかなりホワイトな病院だと思いますね。私はプライベートを優先したいタイプなので、“生活できる程度にそこそこの働き方をしたい”ということに重きを置いています。だからといって、自分の都合だけで17時にすべての仕事を切り上げることは患者さんや患者家族に弊害が出てしまいますので、ある程度は時間外の仕事も引き受けつつ、休日もしっかり確保するようにしています。

角田先生

僕の場合、地域での勤務が始まってからあまりオン・オフを意識していません。いつも、自分がやりたいことや面白いと思うものに正直に過ごしています。でも、そればかりだとどんどん人間として偏りが出てしまうので、週に一冊は仕事と関係のない本を読むようにしたり、何も考えないで筋トレやランニングをする時間を作ったりしています。

小成田先生

ちなみに僕はサウナにはまっています。週に2回は行ってますね。リフレッシュになっていいですよ。みなさんにもおススメしたいです。

安齋院長

みなさんがそれぞれにしっかりとリフレッシュできるよう休みもちゃんと確保されていますし、遅くまで仕事があるといった環境ではありません。オンとオフが明確で、働きやすく働きがいのある職場環境です。

Q 青森県で医師として生活する魅力は何ですか?また、みなさんにとっての“青森愛”は何でしょうか?

安齋院長

青森県は、どの場所にいっても医師は求められていますし、どこに行っても大きく歓迎してもらえます。住民の方々にとても頼りにされていることが医師としての大きな活力にもなっています。

小成田先生

それと青森県といえば雪が多く寒いという印象が強いと思いますが、実は台風などの災害は少なく、比較的住みやすい場所なんです。青森県は日本海、太平洋、陸奥湾、津軽海峡に囲まれていることが特徴で、それぞれから違う海の表情を見ることができるためドライブにもいいですよね。それに大間のマグロをはじめ、海産物がとても美味しいことも魅力です。

木村先生

海産物だけではなく、りんごやラーメンなどさまざまな特産物があり、青森県はグルメの宝庫ですね。

角田先生

個人的に、青森の魅力の最たるものは「祭り」だと思います。祭り自体も好きですし、それを全力で楽しもうとする気持ちや大切に未来へ繋げていこうとする精神も大好きです。

安齋院長

それと、私には子どもが2人いるのですが、病院のスタッフのみなさんは育児にとても理解がありますし、青森のどの地域にもベビーシッターを引き受けてくれる元看護師のおばあちゃんたちがいます。いい意味で“世話好き”な人たちが多く、子育てのある女性医師にとって青森県のこうした環境も魅力だと思います。

角田先生

僕にとっての“青森愛”はそのまま郷土愛です。自分がこれまで歩んできた人生や思い出を作ってくれた青森県への感謝。それが青森県の地域医療を支える医師としての大きな原動力にもなっています。

落合先生

僕の“青森愛”は、自分の肉親のそばにいられることです。医師として、生まれ育った青森の医療に携わり、貢献できる。それこそが自治医科大学に進学する大きな魅力なのではないでしょうか。

安齋院長

本当にそう思いますね。家族や親族だけではなく、医師として私を育ててくれた地域住民のみなさん、働いてきた病院のスタッフたちにも恩返しができるよう、医師として常に勉強し続け、青森のみなさんに医療を通してしっかり貢献していきたいと思います。

今回は、Vol.1・Vol.2に分けて、公開いたします。
Vol.1の記事はこちら

【村の医療に献身した名家】
旧三上家住宅(三上剛太郎生家 青森県下北郡佐井村にある有形文化財)

~先達の紹介~

明治時代、日露戦争に従軍して手縫いの「赤十字旗」により負傷兵70余名の命を救った三上剛太郎医師は、大間町に隣接する佐井村の出身であり、その後、「仁」と「愛」の精神のもとに地元で地域医療に努めました。

~紹介パンフレット・生家の写真~
紹介パンフレット(PDF/343KB)