2021年4月、弘前大学医学部の【学生団体CoCo-Cam】(ココキャン)は、全国でも珍しい地域住民、中高生、医系学生らが交流できるカフェ【医Café SUP?】(イカフェサップ)をオープン。医学生らがカフェ店員として立ち、地域と医療をつなぐ独自の活動を行っています。
【学生団体CoCo-Cam】の設立者である白戸蓮先生と、立ち上げメンバーである弘前大学医学部の佐々木慎一朗さん、野々山航士さんに、青森県で医師を目指すこと、青森の医療の特徴、そして【学生団体CoCo-Cam】や【医Café SUP?】の活動内容などについて話を伺いました。
弘前大学医学部の【学生団体CoCo-Cam】(ココキャン)は、当時、弘前大学医学部5年生だった白戸蓮先生が中心となって2020年10月に立ち上げた学生団体。医学生による高校生の進路支援をする「進路塾」の運営や、地域住民への健康促進のためのイベントを開催するなど、さまざまな活動を行っています。
2021年4月には医学生と地域住民が交流できるカフェ、【医Café SUP?】(イカフェサップ)を開業。住民が病院に行く1歩手前で、カフェ店員である医学生と健康や医療についてカジュアルに話せる場として、地域と医療をつないでいます。また【医Café SUP?】での交流やイベントを通して、高校生や医系学生が地域の魅力に触れることで、将来、青森県の医療を担う医療者養成の役割も目指しています。
今回は、Vol.1・Vol.2に分けて、公開いたします。
Vol.2の記事はこちら。
佐々木さん
僕は人体への純粋な興味があったからです。塾にいけば医学部を目指す先輩がいたり、親が医師という友達も数人いたので、医師という職業への興味が自然と生まれる環境にあったことも大きかったですね。
野々山さん
僕も人体にすごく興味がありました。実際に医学部に入って、人体について学んでいくことが想像以上に面白いですよね。
佐々木さん
学べば学ぶほど人体の奥深さを知ることができますよね。皮膚をつねったら赤くなるのはなぜか。風邪を引くと熱が出るのはなぜか。こういったことに答えられるようになるのは、人体の構造と機能を学ぶことができる医学生ならではの特権です。
野々山さん
それと、僕は青年海外協力隊に憧れていて、医療系の資格が大きく役立つと思い医師を目指そうと決めたんです。
白戸先生
野々山くんは愛知県出身だけど、どうして弘前大学に進学したの?
野々山さん
国公立の医学科なら、正直、どこでもよかったんです。弘前大学は受験方式が自分に合っていたからなんですよね(笑)
佐々木さん
愛知県から青森に来ることに抵抗はなかった?
野々山さん
全くなかったですね。北海道とか沖縄は多くの人が旅行で行くじゃないですか。でも青森はこういった機会でなければ行くことはないだろうと思ったんです。僕は全く行ったところのない場所に行くのが好きだったので、むしろ、青森という知らない土地に行くことがとても楽しみでしたね。
佐々木さん
医学生になると、長い時間を医学への勉強に費やすことになります。大学生活というと、空きコマ(講義のない空いている時間のこと)で、部活やアルバイトをするイメージがあると思いますが、医学部は基本的に空きコマはありません。
野々山さん
そうですね。最も多くの時間を費やしているのは、やはり医学の学習です。1日のうちでも、授業は朝から夕方まで続くことが多いですね。
佐々木さん
医学部生の1日は、8時40分から17時30分まで学校に行くというのがメインで、放課後を迎えた時は、なんとも言えないの開放感がありますよね(笑)。1年の流れでいうと、8、9月の夏休みと3月の冬休みといった長期休みの直前はテストが待ち構えています。
野々山さん
僕の場合、テストが少ない期間ではサークル活動や、【学生団体CoCo-Cam】の活動などをしています。
佐々木さん
放課後をいかに有意義に活用できるのかが重要ですよね。自分の可処分時間(個人が自由に使える時間)と相談して、真に自分のしたいことを見つけることが学生生活を充実させる鍵かもしれません。
白戸先生
僕はいま、健生病院で臨床研修(医師免許取得後、基本的な診療能力を身に付けるための2年間の研修)をしています。当たり前のことですが研修医になると、直接、患者さんを相手にしますので日が昇る頃に出勤し、日が沈んでから帰るという生活となります。休日も当直があったり、とにかく病院にいる時間が長いですね。学生時代よりも「時間」において圧倒的に貧乏になるので、学生時代は「時間」をかけて経験できるもの、成し遂げられるものに挑戦してみるといいもしれません。
野々山さん
医師として実際に働くようになって、面白いと感じていることはありますか?
白戸先生
医学生時代には教科書で学んだり、見学だけで完結していたものが、医師になると自分の頭で考え、手を動かして医療を実践できる点が面白いですね。これまでは想像でしかなかった現場の課題や患者さんの求めていることがダイレクトに入ってくるため、課題解決や患者さんの要望に応えるために新しい挑戦を繰り返す大変さもあります。それを乗り越えていくことや、高いモチベーションを保つためには、どのような医師になりたいのかという具体的なビジョンを持つことが大事だと思っています。
白戸先生
「何科の医師になって、何の手技をするか」ではなく、「どんな人の健康を守るために、何をするべきか」を常に考え実践できるような、目的と手段を混同しないような医師になりたいですね。そのような視点で考えたとき、専門を「臓器」や「急性期・慢性期のような経過」に区切ったものではなく、「人」を専門にしている総合診療医(診療科や臓器に関係なく、どのような疾患にも対応し予防医療も行える医師)が最も自分の医師像に近いと思っています。
佐々木さん
僕も特定の症例だけではなく、多くの患者さんを診ることができる総合診療医になりたいですね。医学に対する純粋な興味もあるため、臨床(診察・治療)だけではなく、研究もしていきたいと思っています。
野々山さん
僕は救急医を目指しています。救急も診療科を問わず幅広い診療ができますし、青年海外協力隊など、海外で活動する際も救急医学や災害救助に関するスキルを大きく活かせるからです。
白戸先生
医師を目指している高校生にとって、いまの段階で将来の診療科を決めるというのは難しいと思います。医学を学んだり、医師の仕事を経験していくうちに目標も変わっていきます。「何科の医師になりたい!」とか、「こういう医療をしたい!」と具体的に思い描けないからといって医学部をあきらめないでほしいですよね。それと、医師になるためには手先が器用といった特別な能力も必要ありません。いろんな診療科があるので自分に合った働き方ができるので大丈夫です。
今回は、Vol.1・Vol.2に分けて、公開いたします。
Vol.2の記事はこちら。
白戸先生
高校入学当時は文系志望で、実はお笑い芸人になりたかったんですよ。1年生の最後に文理選択で迷いましたが、高校の創立記念でOBである医師の講演を聞いたとき、仕事を楽しみながら人の役に立つことができるのはお笑い芸人と共通しているなと思い、医師という仕事に興味をもちました。
それと、健康で休むことなく学校に通うことができ、何不自由なく過ごしてきた自分はなんて恵まれているんだと感じ、「健康でないこと」で理不尽を背負っている人たちの力になって、生まれ育った青森の人々に恩返しがしたいと思い医師を目指しました。