第14回 Vol.2 青森県で医師になろう 後編
青森県でなら、医師の可能性が大きく広がる!

ビジネス、経済、社会も学べる環境で、さまざまな課題を解決できる医師になる。

2021年4月、弘前大学医学部の【学生団体CoCo-Cam】(ココキャン)は、全国でも珍しい地域住民、中高生、医系学生らが交流できるカフェ【医Café SUP?】(イカフェサップ)をオープン。医学生らがカフェ店員として立ち、地域と医療をつなぐ独自の活動を行っています。

【学生団体CoCo-Cam】の設立者である白戸蓮先生と、立ち上げメンバーである弘前大学医学部の佐々木慎一朗さん、野々山航士さんに、青森県で医師を目指すこと、青森の医療の特徴、そして【学生団体CoCo-Cam】や【医Café SUP?】の活動内容などについて話を伺いました。

弘前大学医学部の【学生団体CoCo-Cam】と【医Café SUP?】について

弘前大学医学部の【学生団体CoCo-Cam】(ココキャン)は、当時、弘前大学医学部5年生だった白戸蓮先生が中心となって2020年10月に立ち上げた学生団体。医学生による高校生の進路支援をする「進路塾」の運営や、地域住民への健康促進のためのイベントを開催するなど、さまざまな活動を行っています。

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2021年4月には医学生と地域住民が交流できるカフェ、【医Café SUP?】(イカフェサップ)を開業。住民が病院に行く1歩手前で、カフェ店員である医学生と健康や医療についてカジュアルに話せる場として、地域と医療をつないでいます。また【医Café SUP?】での交流やイベントを通して、高校生や医系学生が地域の魅力に触れることで、将来、青森県の医療を担う医療者養成の役割も目指しています。

【この3人に話を聞きました!】
白戸 蓮 先生(しろと・れん)
津軽保健生活協同組合 健生病院
臨床研修医
白戸 蓮 先生(しろと・れん)
出身地:青森県八戸市
出身大学:弘前大学医学部(地域枠)
目指す診療科:総合診療科
佐々木 慎一朗 さん(ささき・しんいちろう)
弘前大学医学部医学科3年(地域枠)
佐々木 慎一朗 さん(ささき・しんいちろう)
出身地:青森県弘前市
目指す診療科:総合診療科
野々山 航士 さん(ののやま・わたる)
弘前大学医学部医学科2年
野々山 航士 さん(ののやま・わたる)
出身地:愛知県豊田市
目指す診療科:救急科

今回は、Vol.1・Vol.2に分けて、公開いたします。
Vol.1の記事はこちら

Q 白戸先生が中心となって設立された弘前大学医学部の【学生団体CoCo-Cam】やカフェ【医Café SUP?】を開業された目的は何でしょうか?

白戸先生

青森県は短命県や医師不足など、医師として解決すべき課題があります。医学生という立場を活かして、課題解決のために地域で何か活動できないかと考え、【学生団体CoCo-Cam】を立ち上げたんです。地域の人たちの健康をどう守るのかを考えたとき、「住民の方々がコーヒーを飲みながら気軽に医療や健康の話、相談などをできる場所があれば」と思い、医学生によるカフェ、【医Café SUP?】を開業しました。

佐々木さん

医師ではなく、医学生だからこそ住民の方々が気軽に相談できたり、話ができる。そこは、僕たちでしかできない大きな強みですよね。

白戸先生

そうですね。医師は人々の健康の守り手とよく言われますが、健康は身体的や精神的、さらに社会的にも満たされたものでなければなりません。身体や精神に関しては病院で診れますが、生活環境や習慣など社会的な要因は総合診療医も診ていますが、患者さんが病院に来てくれなかったら何もできないわけです。そうした“社会的”な部分において地域の人たちの健康をどう守るのか。そこにアプローチできるのが【医Café SUP?】の強みなんです。

佐々木さん

【学生団体CoCo-Cam】による健康促進のための啓蒙活動や【医Café SUP?】での会話などを通して、学んできたことを地域の人たちへアウトプットできることも、僕たち医学生にとって大きな魅力であると感じています。

Q 【学生団体CoCo-Cam】やカフェ【医Café SUP?】では具体的にどのような活動をしているのでしょうか。また活動を通してのような学びを得られていますか?

佐々木さん

現在、大きく2つの企画をしていて、一つは、月2回の“市民企画”。例えば「花粉症について」など、各テーマに沿って市民のみなさんを中心に健康教育の一躍を担えるような企画をしています。もう一つは医系学生向けの“総診企画”で、総合診療の先生と一緒に学習会を開いています。【医Café SUP?】の開業のビジョンである“地域と医療の架け橋となる”を達成できるような企画やサービスをもっともっと提案していきたいですね。

野々山さん

僕は現在、【医Café SUP?】のリーダーとして運営方針や営業目標、出店計画などの議論を主導する役割を担っています。経営の安定化やチームワークで経営課題を解決していくなど、【医Café SUP?】の活動を通して、ビジネスや経営を実践的に学べることも大きな魅力ですよね。学生生活の後半では、自分で一から事業を提案してみたいと考えているので、そのスタートに活かせるのではと思っています。

白戸先生

【医Café SUP?】は、医学生が医療以外の手段で問題を解決する一歩を応援できる場だと思っています。もともと【医Café SUP?】を始めた一つの理由に、「大学で学べないことを学ぶ場所」もコンセプトにしており、いろんなことを学べる場所なんですよね。ここでの活動を通して、ビジネス、地域経済、飲食、エンタメ、教育など大学医学部や病院では学べない、他分野の学びを得ることができるんです。

佐々木さん

それに、【医Café SUP?】に集まる仲間たちとコミュニケーションを取ることも楽しみなんですよね。

白戸先生

【医Café SUP?】に来れば楽しい医学生たちがいますし、医学部生に限らず他の学部でメンバーになっている人もいます。人脈づくりという役割もありますし、仲間が増えることで医系学生のキャリア支援もできるのではと感じています。

佐々木さん

去年、高校生が【医Café SUP?】に来てくれて、弘前大学医学部の総合型選抜(AO入試)の志望文の書き方がわからないという相談を僕にしたくれたんです。その後、無事合格して、【学生団体CoCo-Cam】の3期メンバーになってくれた。そうして仲間が増えていく好循環も生まれています。

野々山さん

受験勉強や入試のことなど、高校生の悩みを解決する活動もしていますので、医療人を目指す中学生や高校生の方にも、ぜひ【医Café SUP?】に立ち寄っていただき、気軽に何でも相談してほしいですね。

佐々木さん

そうですね。【医Café SUP?】に来てくれるお客さまが僕たちの高いモチベーションになっています。カフェに来てくださる明確な人がいて、その人の相談に乗ったり、悩みを解決したり、目の前の人に貢献できることは嬉しいですし、やりがいも大きいです。

白戸先生

【医Café SUP?】を通して、地域の人々とつながることができたり、どんなことに困っているのか、どんなことを必要としているのかなどニーズを知ることができたり、これまで漠然としていた「誰かの役に立ちたい」が明確になった。地域医療の地域とはなんだろうとか、青森に貢献したいけど青森の人たちの具体的な姿が思い浮かばない…そうした医学生たちも多いと思います。【医Café SUP?】の場を通じて住民の方々と触れ合いながら、徐々に青森愛を醸成してもらい、医師としての深みも学んでいけるような場所になればいいと考えています。

Q 弘前大学で医師を目指す魅力は何だと思いますか?

野々山さん

【学生団体CoCo-Cam】や【医Café SUP?】などを通してたくさんの学生と話したり、住民の方々と直接触れ合ったり、カフェの運営に関わったりと、想像以上に広い世界を経験しているなと感じています。

白戸先生

将来、開業医や管理職として病院経営に携わる医師も多くいますが、医師が経営を学ぶ機会はほとんどありません。今後、超高齢化や人口減少社会の加速、医療AIなどのテクノロジーが浸透していくことで医師を取り巻く環境が変わり、医師の働き方も多様化していくと思います。そうした時代に必要なのは、経済や社会といった側面からも、いろんな課題を解決できる医師であり、その土台を【学生団体CoCo-Cam】や【医Café SUP?】などの活動を通じて得られるのではと考えています。

野々山さん

医学生で、ビジネス、経済、社会などを実践的に学べる環境は他にはないと思いますね。この経験は、ものすごく大きな価値があると感じています。

佐々木さん

そうですよね。僕は学生起業家の登竜門として知られるビジネスコンテスト『キャンパスベンチャーグランプリ(CVG東北)』で新しい物流サービスの提案をして審査員特別賞をいただきました。弘前大学は『弘大じょっぱり起業家塾』を開催するなど地域課題に取り組んだり、地域活性化に貢献する人材育成にも力を入れています。医師免許取得のためだけではなく、新たなビジネスを提案したり、起業したり、弘前大学医学部はそうしたアプローチもできる環境なんですよね。そこが他にはない大きな魅力だと感じています。

白戸先生

それに弘前大学は総合大学なので、他分野を学ぶことができる環境も整っていますよね。

野々山さん

総合大学なので、さまざまな分野を学ぶ学生たちと知り合えることも魅力です。医学部は学士編入の人も多く、社会人経験のある人生の先輩の話を聞くのは楽しいですし、学ぶことも多いです。

白戸先生

医師を目指す人にとっては、青森県の短命県や最低賃金が低いといったネガティブな部分も魅力になると思うんです。たとえば健康格差。コロナ禍において青森の感染者数がなぜ多いかというと、最低賃金が低く、貧困によってマスクが買えない、十分な食事が取れていないということも原因の一つであると考えています。そうした社会的側面からも健康を守らないといけません。青森には解決すべき医療の課題があるからこそ、解決に向けたさまざまな取り組みや研究ができる。これは大きな特徴だと思います。

佐々木さん

そうですよね。青森県は少子高齢化や過疎化など課題が多いですし、山・川・海と豊富な自然があり、都市部もあるなど、いろんなエリア、いろんな条件が揃っていて、研究にも適している地域だと感じています。研究によって課題解決を図りながら、青森県のさまざまな医療を良くしていきたいと思っています。

白戸先生

青森といえば、短命県とか低賃金といったネガティブなイメージがどうしても先にきてしまう。そうではなく、青森といえば、りんごや桜といった魅力あるイメージが先に来るようにしたいですね。

Q 他に青森県(弘前大学)の魅力があれば教えてください。

野々山さん

僕が愛知県から弘前に来て感じているのは時間がゆっくり流れていることです。高校時代より自由に行動できる感覚を抱いています。暮らしやすく、ストレスがないんですよね。

佐々木さん

大学のある弘前はとてもコンパクトな町で大型スーパーや電器店も近くに揃っていますし、とても住みやすいです。初めて一人暮らしをする方も、安心して暮らせる町だと思います。

野々山さん

そうですね。弘前大学に入学して、初めて青森県で暮らして、たくさんの青森の良さを味わっています。いくつになっても青森に帰ってきたいと感じるほどいい場所だと実感していますね。

白戸先生

青森出身者だけではなく、県外から来た人にとっても、青森を故郷として誇れるようになってくれたら嬉しいですね。それってすごく素敵なことだと思います。

野々山さん

僕はいま、津軽三味線を弾くのにハマっているのですが、青森に来ていなかったら、津軽三味線の楽しさを知らないままずっと過ごしていると思います。青森に来たことで、自分の世界が想像以上にぐっと広がりましたね。毎日がとても楽しいですし、充実しています。

佐々木さん

最初は青森に全く興味がなくても、学生生活を過ごしていくうちに、どんどん青森愛が醸成されていく。そうした魅力が青森にはあるんです。

白戸先生

本当にそうですよね。高校生のみなさん、ぜひ青森で医師を目指しませんか? 共に青森の医療を盛り上げていけたら嬉しいですし、医療などを通して青森県のいろんな課題を解決し、次世代が誇れる青森にしていきましょう。

取材・撮影:2022年10月26日

今回は、Vol.1・Vol.2に分けて、公開いたします。
Vol.1の記事はこちら