第6回
医学部を目指す高校生におくる現役医学生のリアルな本音

本音で語る「青森での医学部進学」

弘前大学医学部医学科の5年生5名が率直に語る。医師になろうとしたきっかけ、入学前後のイメージの違い、なぜ青森の医学部を選んだのか…。ぶっちゃけトークで高校生におくる。

  • 三上洋平(みかみようへい)
    ニックネーム:洋平さん

    若いメンバーの中で社会人経験のあるお兄さん的存在

  • 野月徳実(のづきなるみ)
    ニックネーム:なるみん

    真面目で芯が強くひたむきな医学生

  • 鈴木敦子(すずきあつこ)
    ニックネーム:あっちゃん

    弘前大学医学部の絶対的アイドル

  • 三浦佑規(みうらゆうき)
    ニックネーム:三浦くん

    笑顔がさわやかムードメーカー(でも実はおばあちゃん子)

  • 石橋尚弥(いしばしなおや)
    ニックネーム:バッシー

    痛みがわかるがんばり屋

Q 「医学部を目指そう」「医師になりたい」と思ったきっかけは?

なるみん

私が医師を目指そうと思ったのは中学生の時。叔⺟が出産する時に、青森にお医者さんが少ないって知ったからです。それから近所の病院の前を通るたびに、「絶対、お医者さんになって、地元の人たちの力になるぞ」って強く思うようになりました。

あっちゃん

私は元々、医療に興味はあったんだけど、勉強が難しそうっていうイメージがあって。だけど、⾼1の時に参加した⼋⼾市の医師体験学習で、一緒に行った先生が「今日は医師を目指している学生さんたちが勉強に来ましたよ」って紹介してくれて。そうしたら、訪問先のおじいさんが涙を流しながら「応援しています。頑張ってください。」って言葉をかけてくださったんです。学生の私たちにですよ!その時、「絶対にお医者さんになるんだ」って心に誓ったんです。

バッシー

僕は小さい頃から病気がちで、病院って身近なものだった。病気はやっぱりつらかったけど、先生も看護師さんもみんな優しく励ましてくれて、がんばる力を与えてくれた。だから、僕にとって病院の先生ってやっぱりヒーローなんだよね。

三浦くん

わかる、わかる!医者がヒーローっていう感覚!やっぱりテレビドラマにでてくる医者って格好いいじゃないですか。天才的でどんな病気でも治してしまうみたいな。実際に、僕も小児まひや白血病で病気と闘っている友達がいて、「病気で苦しんでいる人を助けたい!」って思ったのが医者を目指したきっかけです。

洋平さん

僕は医学部に入る前、弘大の保健学科を卒業し、リハの仕事をしていたんです。でも、日々の仕事の中で、やっぱり医者になって患者さんにもっと深く係わりたいっていう思いが強くなってきて、ウチの医学科に⼊りました。



Q なぜ、青森県の医学部(弘前大学)に進学したの?

バッシー

僕は千葉の船橋出身なんだけど、浪人時代に弘前に来た事があって、なんか僕の地元に環境が似ていたんだよね。だから、親近感を覚えたというか、弘前が好きになったというか…。だから、弘前大学を受けました。

三浦くん

僕もバッシーと同じ千葉出身なんだけど、両親が青森出身で小さい頃から青森のおばあちゃん家によく遊びに来ていたんだよね。その頃から、「いいところだな。いつかここに住んでみたいな」って漠然と考えていたんです。それで弘前大学を目指しました。

あっちゃん

そういう言葉を聞くと、地元の人間としてすごくうれしい!私が弘大に進んだのはやっぱり地元だったからかな。青森でお医者さんとして働くなら、学生のうちから青森県の医療に触れていた方が断然いいと思ったし。

なるみん

私もあっちゃんと同じかな。医療はチームワークが大切だと思うし、学生時代から青森で人と人とのつながりを、たくさんつくっておきたいと思って弘大に進学しました。

洋平さん

僕は、他の学部との交流を持てる総合大学っていうところかな。保健学科もそうだし、院内にも知り合いがいるからね。医療関係者以外の人とのつながりも持てるって、これからの仕事において本当に大切な事だと思うので。



Q 青森県、もしくは青森県の医療の特徴ってなに?

バッシー

他県から来たから余計に思うのかもしれないけど、青森は人と人との距離が近くて、助け合いの精神が強いところ。そして、なんといっても温かい人たちが多い!それから、青森県は都会に⽐べて通院できる範囲で病院の選択肢が少ない分、青森の先生たちはその責任をしっかり受け⽌めて、日々勉強し、診療に当たっているところだよね。温かい県民性と患者さんに真摯に向き合う医者がいるからこそ、患者さんと医者の厚い信頼関係が生まれるんじゃないかな。それは、医者と医者、医者と医療従事者の関係においても同じだと思う。

三浦くん

そうだよね。地域医療が身近にあって他の職種の人たちと協力するのが当たり前の環境っていうのは、青森県の医療の特徴だと思う。

なるみん

青森県って全国で最も短命な県なんですよね。原因は飲酒や喫煙、運動不⾜、検診受診率の低さなど「健康に対する意識の低さ」っていわれているけど、逆にこういう環境だからこそ、短命県を返上するために医療を盛り上げていこうっていう熱心な先生がたくさんいらっしゃいますよね。



Q 医師になるために必要な事はなんだと思いますか?

あっちゃん

私が医学生になって感じたのは、実習で患者さんと話す時、意思疎通がこんなにも難しいものなのかっていう事でした。ふだんの生活では感じなかったけど、患者さんとのコミュニケーションってすごく大事なんだって身に染みて感じました。

バッシー

僕も同じような経験があって。患者さんに病状を説明した時、「脳卒中」という言葉はわかるんだけど、「脳梗塞」がわからない患者さんがいたんだよね。これが“医師頭”というんだって思いました。自分の発する言葉は患者さんも全部理解できると勝手に思い込んでいたんだ。患者さんが理解して納得できるようにわかりやすくかみ砕いて説明する大切さを実感しました。

なるみん

私は、健康優良児だったからかもしれないけど、医学部に⼊学する前は、お医者さんは病気の事をなんでも知っていて、病気になったら病院に行けば大丈夫だと思ってました。でも、現実はお医者さんでもわからない事がいっぱいあって、日々それを克服するためにすごく悩んでいるし勉強もしている。だから、「患者さんの目線や期待」と「人の手で行う医療の限界やギャップ」を埋めて、理想の医師像に近づくために、すごい努力をされてるんですよね。

洋平さん

本当にすごいよね。どの先生方も常に「今日より明日」を目指している。医者は生涯にわたって自⼰研鑽し続ける事が必要だっていう事を、医学生になってひしひしと感じています。

なるみん

あと現実問題として、医師は理数系の要素だけじゃなくて、医学を学ぶ中で多くの患者さんと接していくための国語力や論⽂なんかで新しい知⾒を得るための英語力も重要だなって思うな。

三浦くん

医学生になって間もない頃、先生から「社会を知るために今のうちから⾊んな事を経験しておきなさい」といわれた事が強烈に印象に残っているんだけど、ハワイ大学の医学生と交流した時に、医学系だけじゃなく、本当に⾊んな事に興味を持っていて、あらゆる事に詳しくて驚いた。医者は病院だけじゃなく、公衆衛生や産業分野、さらに医系技官として行政にも必要とされる職業だから、理系、⽂系を問わず広く豊かな知識が求められると実感したんだ。すごくいい刺激だったよ。

バッシー

それからもう一つ大事だと思う事なんだけど…。僕は医学部受験をあきらめようと思った事があるんだけど、⾼校の先生に「頑張れば医学部に受かる」といわれて、今ここにいる。「あきらめない心」は絶対に必要だと思う。



Q あなたにとって「医師」とは?

なるみん

医師という職業は、人が病気っていう一番つらくて苦しくて不安な時に、共に闘い、助けられる存在で、「ありがとうございます」と感謝されるすごくやりがいのある仕事だと思います。

バッシー

その通りだね。かつて僕自身がそうしてもらったように、病気やけがをした時に寄り添えるのが医者であって、人のために役⽴つ最たる職業だと思うな。



Q どんな医師になりたい?

バッシー

いずれは看取りや緩和ケアの分野で貢献したいけど、たくさん働けるうちはできるだけ多くの患者さんを救えるように急性期医療でがんばりたい。青森にきていろいろな人たちに⽀えてもらっているから、この地で医学生として学べていると思う。だから、自分自身も地域の一員であるという自覚を持って、この地域の人たちが生活⾯や医療⾯で困っていれば、それを⽀えられるような医師になりたいと思っています。

あっちゃん

私は生まれ育った青森県に恩返しができるよう、患者さんや社会が求める医療ができる医師になりたい。実際には理想のようなキラキラした世界ばかりではないけど、厳しい状況にもきちんと対応できる知識と機敏さ、判断力をつけていきたいです。

三浦くん

僕は患者さんにたくさんの笑顔をつくる事ができる医師になりたいな。そういう医師になる事で自分も笑顔でいられて、自然と周りを元気にさせる存在になれたらなって思っています。

なるみん

青森は私の生まれ育ったかけがえのない場所。医師になるために家族や友人など多くの大切な人たちからたくさんの力をもらえる場所です。だからこそ、早く一人前の医師なって、地域の人々の生活に寄り添いながら、周りの人たちに「ありがとう」の気持ちを返していきたいです。



Q これから医学部を目指す高校生の方へメッセージをお願いします。

洋平さん

僕は秋⽥県出身なので、青森県は生まれ育った故郷ではないけれど、今では自分の故郷といってもいいほど大切な場所になったんだよね。それってやっぱり青森で出会った人たちの魅力がそうさせるんじゃないかな。青森で医師を目指せば、きっとそれを肌で感じると思います。是非一度、青森に来てください。

あっちゃん

私は青森県からでた事がないけど、青森の豊かな自然に囲まれた生活環境で、医師として大きく成⻑できるすばらしい教育環境が整っています。ちょっぴり気候が厳しいけど、それを凌駕するだけの魅力がいっぱいあるから、青森においでよ。

なるみん

さっきバッシーもいったけど、「自分に医師は無理かな」とか「自分の能力では無理だろう」って思っている人も、目指す価値がある職業だから絶対あきらめないでほしいな。青森の先輩たちが私たちにしてくださっているように、次は私たちが応援するから。

三浦くん

医学部に⼊って、「もう戻れない場所まで来てしまった…」と正直思いました。僕らを一人前の医師にするために多額の税⾦が投⼊されています。そして臨床実習の場で、なにもできない今の僕らに「がんばれ」と応援してくれる人たちがたくさんいて、身が引き締まる思いを幾度となくしてきました。そんな時は雄大な岩木山をみて気持ちをリセットしています。医師は決して一人の力でなれるのではなくて、周りの協力があってこそなれるもの。青森県は人に恵まれた環境だからこそ、いい医師になれる⼟台があると思う。青森で一緒にいい医師を目指していきましょう!

  取材・撮影:2017年11月1日