第10回
総合診療医ってどんなの?総合診療医に1日密着

青森県の総合診療医【3つの特徴】

坂戸 慶一郎(さかと・けいいちろう)
1
ニーズが高く、やりがいが大きい
青森県は総合診療医のニーズが非常に高く、医療機関や住民からとても必要とされている存在です。自分が必要とされ、頼りにされ、任される環境は、総合診療医としての実力を得るだけではなく、医師としてのやりがいや喜びも大きいはずです。
2
人があたたかく、楽しく働ける(学べる)
青森県の患者さんは研修医や専攻医に診てもらうことに寛容であり、医師も他の職種も教育熱心です。人があたたかく楽しく働く(学ぶ)ことができるため、幅広い医療に積極的に臨むことができ、総合診療医として豊富な経験を積むことができます。
3
“顔の見える”繋がりがある
青森県には総合診療医のネットワークがあります。そうした医師同士の“顔の見える”繋がりによって、活発な情報交換や学び合いによる知識の習得やアップデート、支え合いによる働きやすさを実現しています。
坂戸 慶一郎(さかと・けいいちろう)
健生黒石診療所 所長
坂戸 慶一郎(さかと・けいいちろう)
弘前大学医学部卒業(2001年)
専門:家庭医療・総合診療
資格: 日本プライマリ・ケア連合学会 認定医・指導医
日本在宅医療連合学会 専門医・指導医
2013年8月 医療福祉生協連家庭医療学開発センター指導医養成コース修了
[経歴]
1994年4月 弘前大学医学部入学
2001年3月 弘前大学医学部卒業
2001年4月 青森民医連就職
2010年4月 健生黒石診療所着任
健生黒石診療所(青森県黒石市)の所長であり、総合診療のエキスパート、坂戸慶一郎先生の1日に密着しました。
黒石診療所では看護師4人(常勤)と坂戸先生を含めた医師3~4名(初期研修医は系列法人や京都府立医科大学から年間2~3名、総合診療専攻医は毎月1~2名が入れ替わりで学びにきています)で診療を実施。多職種と連携しながら訪問診療にも力を入れています。

一日の流れ

坂戸 慶一郎(さかと・けいいちろう)
8:30 ―朝礼・ミーティング
外来診療は一部予約制。本日診療する患者さんの情報を看護師さんたちとチェックします。
8:40 ―外来
一日の流れ
外来開始時間には待合室がほぼ満席に
一日の流れ
坂戸先生が自ら待合室に出て患者さんを呼び出します
「すぐに診療を必要とする具合の悪い患者さんがいないかどうか顔色や様子をみています。それと地域医療では患者さんの生活背景や人間を知ることも重要ですから、待合室にいる患者さんたちの人間関係も見ています。意外な人が友達同士だったり親戚だったりするんですよね。また、耳が遠い患者さんは目を合わせて呼ぶことも必要なので、基本的には自分で待合室に出て患者さんを呼ぶようにしています」
一日の流れ
軽度の腹痛を訴える70代の男性患者さん
坂戸先生はイラストを描きながら腹痛を起こしているいくつかの要因を丁寧に説明。胃カメラ検査を勧めたが、患者さんはリンゴ農家で収穫時期は忙しく一カ月後の検査を強く希望。患者さんの個別性を尊重し、一カ月後の検査日までに何かあれば相談するように伝える。
一日の流れ
定期的に通っている90代の患者さん
聴診器による診察の後は、患者さんの昔話を聞きながら受け答えなどの様子を確認。ご家族にも普段の様子や困っていることをヒアリング。腰の痛みがあり、痛み止めの薬を使いたいものの副作用が心配で躊躇していることや、排尿回数を減らす薬について相談があった。坂戸先生は「この痛み止めは副作用が少ないので、もう少し積極的に使ってみても大丈夫ですよ」と患者さんが不安なく薬を飲めるよう丁寧に説明。
一日の流れ
以前、心臓の治療をしたことのある80代の患者さん
30年以上前から通っている方で、この日は目に違和感があるという相談。坂戸先生は何かあれば気軽に相談できる診療づくりを心がけており、住民からとても頼りにされている。
一日の流れ
子育て中の長谷川弘美先生は平日の日中だけ(17:00まで)の勤務。もともとの専門は小児科だが、現在は総合診療医として研鑽しつつ幅広く診ている。「長谷川先生がいてくれて本当に助かっています」と坂戸先生。
12:00 ―昼休憩
一日の流れ
2階の休憩室に看護師さんや病院スタッフが集まり、みんなでお昼ご飯
坂戸先生のお昼は愛妻弁当。
地域医療研修に来ている研修医の先生に津軽弁講座が始まるなど、賑やかで楽しい昼食時間です。この日はスタッフからゆで栗の差し入れもありました。
13:20 ―訪問診療前のミーティング
一日の流れ
本日、訪問する在宅患者さんについて確認
患者さんの状態、前回訪問したときの様子、薬の確認、ご家族が気にしていることや要望などを共有し、どう対応していくのか事前確認します。
14:00 ―訪問診療
一日の流れ
坂戸先生と長谷川先生の2チームに分かれて訪問診療宅へ
各チーム4~5件の家を訪問します。在宅患者数は50名程で在宅患者さん一人に対して月2回程度、一回20~30分の訪問をしています。
一日の流れ
患者さんの血圧や体温を測り、聴診器で異常がないかどうかを確認
「身体の具合はどうですか?」「痛いところはないですか?」と患者さんに声をかけながら状態をチェック。地域医療研修に来ている研修医の先生も患者さんに声をかけながら診察し、坂戸先生がその場で診療のポイントなどをレクチャーします。
床ずれの処置や、尿カテーテルの交換や、薬の処方をしながら、ご家族から患者さんの様子や要望をヒアリングします。「痛み止めの薬は効果がでているのか」「排便や排尿の管理は上手くいっているのか」など、ときに坂戸先生が療養における悩みや問題点をご家族から引き出し、助言をしたり、指導したりします。
一日の流れ
訪問診療宅に、ケアマネージャー、ソーシャルワーカー、ホームヘルパー、訪問看護師などの多職種が集まりミーティング
坂戸先生が患者さんの状態を説明し、今後の治療方針や薬のことなどを患者さんのご家族の要望を聞きながら確認、共有します。また、各職種から現状や心配なこと、確認事項などを共有します。
16:00 ―研修医の振り返り
一日の流れ
研修医の先生が、その日に外来で担当した患者さんについてプレゼン
どのような症状で、どのような検査や治療、薬の処方をしたのかなどを一人ひとり確認し、坂戸先生と長谷川先生が研修医の先生にレクチャーしていきます。
たとえば、「貧血のある人は、小球性ではなくても、消化管内視鏡検査について本人と相談する」「薬を減らしたい患者さんは経済的な要因もありうること」「午前中が特に元気が出ない患者さんに対するスクリーニングの質問方法」など、患者さん毎に診療のポイントを説明。研修医の振り返りは、「自分の振り返りにもなる大切な時間です」と坂戸先生。
17:00 ―業務終了(月・木のみ夜間外来あり 17:00 ― 18:30)

坂戸慶一郎先生のオフショット

坂戸 慶一郎(さかと・けいいちろう)
ご家族に聞いた、坂戸先生のオフの素顔とは?
坂戸慶一郎先生の奥さん、娘さん(中学3年生)、息子さん(中学1年生)に、坂戸先生のオフの様子について聞きました。
息子さんの声
息子さんの声
運動会を見に来てくれても途中で病院から呼び出しがあって最後までいることができなかったりしたこともありました。仕事だから仕方がないですよね。
パパの仕事は予防注射のときに見たことがあります。いろんな病気を治すパパって凄いなって思いました。ぼくもパパのような何でもできる医者になりたいです。
娘さんの声
娘さんの声
将来は医者を目指しています。きっかけは医療ドラマの主人公と小さい頃から風邪などで診てもらっているパパの診療所にいる長谷川弘美先生に憧れたからです。パパがきっかけではないんですよね(笑)。
でも、パパのことは尊敬しています。数学を教えてもらっていますし、将来はパパのような青森県に貢献できる医者になりたいと思っています。
奥さんの声
奥さんの声
パパはとても子煩悩で、家にいるときはお風呂に入れるなど子どもたちの世話をよくしてくれました。時間があるときは常に家族と一緒に過ごしていますね。子どもたちに勉強を教えたり、遊びに連れていったり。皿洗いや洗濯を干してくれるなど家事も手伝ってくれて助かっています。 子どもたちがパパのような医者になりたいと言っているのは、パパのことを誇りに思ってくれているんだなって思います。
ご家族の声を聞いた、坂戸先生の想い
医師という仕事柄、子どもたちの学校の行事になかなか行けないことはあります。そのため休める時は、できるだけ家族と一緒に過ごすようにしています。そんな時間がとても幸せですね。 子供たちが、私の仕事を肯定的に見てくれているのは、恥ずかしいような嬉しいような感じです。医師になりたいと言っていて、まあそれはどうなるかわかりませんが、どのような道でも、楽しく人生を送ってもらえたらと思っています。
坂戸先生とご家族に聞いた、青森県のイイところ!
息子さんの声
息子さんの声
青森県は温泉が近くにたくさんあって直ぐに行けるのがいいですね。温泉に浸かっているといつの間にかサルが入ってきたりするのも楽しいです(笑)。それと、青森県は寒いからか虫が少ないのも特徴で、虫ギライの人にも住みやすいと思います。
娘さんの声
娘さんの声
小学校でスキーの授業があるので、子どもたちはみんなスキーが滑れるようになります。それと青森県は全国的に問題になっている待機児童がいないので、子育てもしやすいのかなって思います。
青森県がとても大好きなので、ずっと出たくないですね。唯一の不満はテレビのチャンネル数が少ないことかな(笑)
奥さんの声
奥さんの声
子どもの教育面を心配する方がいると思います。確かに都市部の教育環境には及びませんが、進学校もありますし、医学部に進学する人もいます。むしろ自然豊かな中で子育てや教育ができるのは大きな魅力だと感じています。都市部から引っ越してきた方が、「子どもの数が少ないので運動会の行事とかゆっくり写真を撮れるのが良い」って言っていました。子育ても、日々の暮らしもストレスなくのびのびとできるのがいいですね。それと、新鮮な海の幸、山の幸にも恵まれていて、食が美味しいのも自慢です。
坂戸先生の声
坂戸先生の声
青森県には20年近く住んでいるのですが、千葉県出身ということもあり、雪の多さには毎年びっくりしています(笑)。でも雪かきはいい運動になりますし、気分転換にもなるんですよね。
それと青森県は四季ごとの景色がとにかく素晴らしいです。都市部と違い広い面積に人が分散しているので生活に窮屈さがないのも魅力です。雪にさえ慣れてしまえばとても住みやすい最高の環境ですね。
青森県
青森県
青森県

坂戸先生が送る、医学生や若手医師たちへのメッセージ

坂戸 慶一郎(さかと・けいいちろう)
青森県で医師人生を、嬉しく、楽しく
人の役に立つ仕事ができるということは、とても嬉しいことであり、楽しいことでもあります。
患者さんの90%以上は診療所内で解決できる病気であり、子どもからお年寄り、さらに在宅での看取りまで、幅広く力になることができる総合診療医は、これからの時代に必要とされる医師です。
青森県ではそんな総合診療医の力が大きく求められています。それに応えていくことはとても嬉しく、楽しいことであり、医師としての大きな成長にも繋がり、大きなやりがいにもなるはずです。
一人でも多くの若手医師のみなさんに青森県の医療を経験していただき、医師としてのやりがい、仕事の楽しさ、自分が大きく成長することの喜びを感じてほしいです。
青森県は雪のイメージが強いですが、住んで初めてわかる多彩な魅力がたくさんあります。県外の方にも、ぜひ青森県に来ていただき、ここでの生活を楽しんでほしいと思っています。一人でも多くの方が青森県の医療と生活を経験し、総合診療医として青森県の医療に貢献したい、みんなから必要とされる医師として活躍したいと思ってくれる方がいれば、とても嬉しく思います。
青森県
青森県
青森県
青森県
青森県