青森県の初期臨床研修の特徴と、青森県で医師として働く魅力を、関東出身の初期研修医、髙島佑典先生に聞いた。
都市部にある大きな病院と比べて、青森県で研修することに不安を感じている医学生は、地方では先端医療や高度医療が経験できないと思っているかもしれません。しかし、実際に青森県で研修をはじめて、むしろ青森県で研修や研鑽を積むことのメリットがたくさんあると感じています。
医学生時代に関東のいくつかの病院を見学した私の印象ですが、都市部や関東圏の大きな病院での研修は見学がメインであることが多く、初期研修医はお客さんとして扱われていた様に感じました。関東の病院で研修している地元の友人からは、「研修医数が多くて患者になかなか触れることができないし、手技もあまり経験できない」という声も聞いたりしています。
しかし、青森県の場合は、研修が始まり初回のオリエンテーションが終わった次の週に学会に連れて行っていただく事も珍しくありません。更に早くから外来を任されたり、執刀医として手術をしたり、カテーテルをしたり、救急対応をしたりと、初期研修医でも早い段階から即戦力として診療に携わっています。もちろん、上級医の先生方がしっかり見守ってくださるので、安心して積極的に医療に臨むことができます。
加えて、事務の方々が研修以外の煩雑で未経験な業務に対しても、しっかりとフォローしてくれます。まさに、病院が全体で研修医の面倒を見てくれている感じです。
私もそうだったのですが、医学生時代の勉強はどうしても試験の点数を取ることが目的になってしまい、学んだことを患者さんに活かすことができないもどかしさがあり、勉強に対してストレスを感じる事があります。しかし、研修医になると学んだことを活かすことができるようになります。
研修を開始して数ヶ月経ったある日、高エネルギー外傷の患者さんが救急で運ばれて来ました。上級医の先生方の手が回せない状態だったので、そのとき勉強中だったJATEC(外傷初期診療ガイドライン)に従って、一人で全身状態評価を行いました。その後の治療によって徐々に回復していく患者さんから何度も何度も感謝の言葉を掛けていただき、本当に嬉しく自信になりました。
このように、青森県では研修1年目から患者さんに触れる機会が多いため、医師としてのやりがいや喜びを早い段階から実感することができ、それは研修の大きなモチベーションアップに繋がります。
一人の研修医が体験できる症例数という意味では、青森県の症例数は豊富で、珍しい症例も経験することができますし、講座によっては日本初の試みや成果を出しています。都市部ではたとえ珍しい症例に遭遇しても、医師数が多いため他の医師に取られてしまうこともあるでしょう。青森県では、一人ひとりの医師が他ではできない経験を数多く積め、活躍できるチャンスも多く、プライマリ・ケアから高い専門性まで、医師としてのスキルアップに最高の環境であると感じています。
一緒に切磋琢磨し、青森県の医療を盛り上げてくれる仲間が増えれば嬉しいですね。
つがる総合病院
初期臨床研修医(1年目)
髙島 佑典 (たかしま ゆうすけ)
弘前大学卒業(平成29年)
茨城県出身
高校2年生のときに『コード・ブルー』というドラマを観て、救急医に憧れ医師を目指しました。弘前大学を卒業後、出身地である関東に戻らなかった大きな理由は、青森県は医師一人ひとりが経験できる症例数が非常に多く、医師としての真の実力を身に付けることができると思ったからです。
つがる総合病院を研修先に選んだ理由は、部活の先輩が働いていたこともありますが、コメディカルのみなさんが非常に優秀であり、医師へのサポート体制がしっかりしていること。指導医の先生方が優しく熱心であること。診療科がほぼ揃っており、日常疾患を幅広くカバーしているためプライマリ・ケアを習得できること。さらに、診療科同士の垣根が低く、誰にでも気軽に相談できる環境も魅力的だったからです。
実際、救急で外傷の患者さんが運ばれて来たとき、循環器や呼吸の状態を確認し終わり、たまたま後ろを通った整形外科の先生に「ちょっと関節を診ていただけますか?」とお願いして、「オウ、どれどれ。」という感じで、気軽にコンサルして貰える環境があります。こうした科を超えたオープンな環境は、都市部や大病院ではなかなかできない青森県ならではの特徴だと思いますし、研修医が安心して医療に集中できるため、医師として成長する上でとても重要なポイントだと感じています。
医師としての真の実力を身に付けるためには、知識を得るだけではなく経験を数多く積み重ねることが大切です。青森県では、自らの目で見て考え、自らの意思で判断する研修を実践することができます。経験数は医師としての自信となり、4、5年後には大きな実力の差となって表れてくると思います。